感想『手品先輩』~手品成功率が0%であがり症の奇術部部長は好きですか?~
2019年夏アニメ放送開始から約4週間。
7月も残すところあと1日、
あっという間に8月がやってくる。
この時期になればほとんどの作品は4話、早いものでは5話が放映されている。
数十本にも及ぶタイトルの中からどれを視聴継続していくか。
きっと多くのアニメ視聴者が頭を悩ませているだろう。
私はあまり”今期アニメ”をリアルタイムで追うスタイルをとっていない。
そのため流行に疎くオタク達の会話についていけない事も多々ある。
そんな中ある1つのツイートが目に入った
手品先輩、2019年トップアニメらしいね
『手品先輩』
本渡楓さん、高橋李依さんが手品に挑戦する告知動画をTLで見たことがある。
その程度の知識しかなかった。
強いて言えば可愛い女の子が手品披露してついでに豆知識も学べる、萌えと雑学を取り込んだよくある作品と勝手に認識。あとちょっとエッチ
いつもお世話になっている某アニメストアでも配信していたし、
再生時間10数分と気軽に見れそうなので視聴開始。
絶句
おっぱい大きくて可愛い”が”あがり症持ちの高校3年生「先輩」が1年生で新入部員である「助手」くんに手品を披露するもいつもエッチに失敗してしまうコメディスケベアニメ。
最初はそう思った。
テンポも良いし、先輩かわいいし、とりあえず継続かな~って。
しかし、2話・3話と観続けていく中である違和感を覚えた。
それをどうにか言語化してみたのが以下のツイート。
手品先輩コメディスケベアニメと思って視聴したけどあがり症とその他精神障害を抱えた女子高生が最も自身と相性の悪い「手品」を通じて他人とのコミュニケーションを図ろうとするも性的に消費され続ける様を描いてて気付いたら泣いてた
— おわわ (@Aegis07cc) July 30, 2019
そう。先に述べたように先輩は”あがり症”である。また対人分野においてもコミュニケーション能力が備わっているとは言いがたい。
だとしたらなぜ、先輩は手品にこだわっているのだろうか。
失敗して恥ずかしい姿を晒すことも厭わずに。
先輩と手品
前提として先輩はあがり症である。
あがり症は人前(人数は問わない)に立つと激しい緊張や動悸に襲われ、普段のパフォーマンスを発揮できなくなる傾向がある。
私もその経験があるため、先輩の気持ちがよく分かる。
友達や家族間であれば不自由なく会話等を行えるが、いざ全校朝会で前に出たり発表会のステージに立つと体が動かなくなる。
あの状態ではとてもじゃないが繊細な手先の動きが要求され、1つのミスも許されない手品なんてできない。きっとトランプをシャッフルすることすら覚束ない。
しかし、先輩はどれだけ失敗しようとも手品をやめることはない。
手品の準備中にマジックハットからハトが逃げ出そうとも、
お札切断マジックで自腹を切ることになろうとも、
脱出マジックで制服がボロボロになろうとも、
ヘタクソ手品おばさんと子どもたちから呼ばれたとしても。
決して諦めない。
なぜそこまでできるのだろうか。
「そういうマンガだから」と言われてしまえばそれまでではあるが、人物の理解・感情移入はコミックやアニメ、小説を楽しむためには手放すことができない。
二次元だとしてもキャラクターがいる以上そこには命と人生がある。
そう考えた時、”なぜ”と思考するの一つのアプローチになる。
話を戻す。
先輩はなぜ手品を選んだのか。
それは先輩にとって手品は「言葉」だから
そう私は考えた。
単純に手品が好きだからというのも理由の一つだと思う。
幼い頃にTVで手品を見て心を打たれたのかもしれない。
または凄腕マジシャンと書道家の娘なのかもしれない。
しかし、「好き」だけで果たして続けられるだろうか。
あがり症で友達もいなくて、他人と話すのも満足にできないのに。
だのに先輩は手品から逃げることはしない。
それは手品を通してあがり症なりに、
いやあがり症だからこそ、
自分の感情を、気持ちを、人を笑顔にしたいという思いを
伝えようとしているからなのではないか。
そう仮定すると先輩の言動にも納得がいく。
手品が失敗し、エッチな格好やパンツを見られたとしても自身の辱めよりも先に「手品を失敗した」その結果に恥ずかしさを覚えていた先輩。
パンを喉に詰まらせた助手を前にしてもすぐ飲み物を差し出すのではなく、手品という媒介を通じて助けようとする(案の定失敗するのだが)先輩。
助手の入部1ヶ月記念を覚えており、それを祝して特別な手品を披露する(これも失敗するが)先輩。
こうしたことから先輩は誰よりも手品に真剣で、入部してくれた助手のことを大切に想っており、それを手品を通じて伝えようとする。
そんな素敵な先輩なのだ。
失敗率100%
これから先も何回、何十回、何百回と先輩は手品を失敗するだろう。
そして失敗と同じ数の辱めにも合うだろう。
公式から「失敗率100%!!」と箔押しされるくらいだ。
もしかしたら一回も成功することがないかもしれない。
だとしても私は先輩の手品を楽しみに観続ける。
先輩の笑顔
そんなマジックに魅せられた一人の観客として