アスイロ恋模様

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感想『ハイスクール・フリート』~Ripple Effectに捧ぐ~

はいふり」改め「ハイスクール・フリート」を本日(2019年10月8日)視聴した。これまで作品の存在は知っていたしオープニング主題歌の「High Free Spirits」は耳にたこができるほど聴いてきた。#はいふりカメラしろちゃんラーメン入浴部がTLに流れてくることもよくあった。周りのオタクに視聴を勧められたりもしたが”特別批判する点もないが褒める点もないつまらないアニメ”という偏見を持っていたため手を伸ばさずにいた。だが、つまらなかったのは私の斜に構え態度だった。

以下、良い意味で予想を裏切られ「ハイスクール・フリート」を1日で完走し興奮冷めやらぬまま書きなぐった感想文となる。

一応ネタバレ注意

日常系アニメの皮をかぶった「はいふり

可愛いキャラクターデザインの少女たちが艦船を舞台にドタバタと生活する日常系アニメ、が視聴前のイメージだった。キャスト陣も日常系アニメで目にする方が多かったし。だからこそ1話でド肝を抜かれた。ゆるい雰囲気を装いつつも実際はシリアスの手法は魔法少女まどか☆マギカが代表的だが本作もその類かもしれない。読んでも書いても力の抜けるような「はいふり」という語感をそのまま受け入れていた時点で既に製作側の術中にハマっていたのだ。

はじめに世界観の説明を書こうと思ったが作中の説明ではよく分からなかったので割愛。大事なのは「ブルーマーメイドは少女の憧れ、希望」であること。これだけ抑えとけばその時の筆者の心情を正答できない私でもなんとなく理解することができた。

物語は主人公である岬 明乃(ミケちゃん)と知名 もえか(もかちゃん)が幼少期にブルーマーメイドになることを誓い合ったシーンから始まる。そこから9年の時が流れ、ブルーマーメイドを目指す少女が集まる養成学校で二人が数年ぶりの再会を果たす場面へ。

「あぁなるほど、この二人を中心にほのぼのとした艦隊生活が繰り広げられるのね。とりあえず最初の航海だけでも見届けるか」

現実は違った。

入試の成績順でクラス分け(所属艦の決定)がなされるその学校でミケちゃんは最底辺の生徒が集まる「晴風」艦に配属され艦長となり、海洋訓練へ出発→トラブルに巻きこまれ海上を漂っていた。

Q.もかちゃんはどこ?

A.最終話まで再会できません

1話タイトル「初航海でピンチ!」の初航海が最終話まで続くとは思いもしなかったわけである。かくして当初の言葉通り初航海を終えるまで私のログは開かれたままとなった。

 

晴風」艦長 岬 明乃の信念

この作品を視聴して、私は胸を強く打たれたテーマが二つあった。一つ目が「ミケちゃんが貫いた信念」である。

本作の舞台となった陽炎型航洋直接教育艦晴風」では変わり者を寄せ集めたような個性豊かな乗組員(クラスメイト)が31名在籍(+1人と1匹)、共同生活を過ごしている。その中でミケちゃんは初対面の相手にも笑顔で話しかけ、すぐにあだ名で呼び距離を縮めようとする姿勢をとっていたが、これは単に艦長として全体の指揮を取りやすくするためのコミュニケーションではない。彼女は2話で副長の宗谷 ましろ(しろちゃん)に告げている「海の仲間はみんな家族」「家族を守ることが私にとって第一」だと。これは「晴風」がトラブルばかりの初航海を終えるまで、迷わずに航路を進むための方位磁針の役割を持っていたように思う。時にはその信念が「艦長は何があっても船から離れずに指示を出すべき」というしろちゃんの考えとぶつかって航海を困難にすることもあった。だがミケちゃんは最後まで自身の考えを貫いた。なぜそこまで固執したか、それは彼女の生い立ちが関係していた。7話で「晴風」を襲った雷と嵐に過剰なまでの恐怖心を抱いたミケちゃんを不思議に思い仲間は理由をたずねた。幼い頃に両親を海難事故で亡くしたこと、ブルーマーメイドに命を助けられたこと、自身の壮絶な過去を語る艦長を前に船員たちは言葉を失う。寝転びながら視聴してた私も思わず姿勢を正した。きっとその日からミケちゃんは船のお父さんのような存在になることで家族を守れる人間になりたいと強く願ったのだろう。それを知ってからミケちゃんの言葉の端はしには心から家族の無事を思う”岬 明乃らしさ”が溢れていることに気付く。『越えられない嵐はないんだよ!』な……とまらない涙を拭い一人復唱する。

 

私はあなたのマヨネーズになる

 二つ目のテーマは「足りないからこそ補い成長できる関係」を挙げたい。 

先ほど挙げたように「晴風」クラスに在籍する31名の乗組員は得意分野や適性で、

艦橋要員
砲雷科
航海科
機関科
主計科

のグループに分けられている。それだけ多くの人間がいれば各々に嫌いなことや弱点があって当然で、一人では越えられない壁にぶつかったまま助けを求められずに立ち尽くしてしまう者もいる。知床 鈴(リンちゃん)もその中に含まれていた。航海長として操舵を担当する彼女は心配性で逃げるときだけ活き活きとなる弱気な自分を悔いている少女だった。しかし家族みんなを思うミケちゃんの言葉に励まされ、リンちゃんは徐々に一歩を踏み出すようになる。

そして物語終盤では大和型超大型直接教育艦「武蔵」に閉じ込められている幼馴染のもかちゃんを助けたい一方で失敗したら家族の命を失う可能性がある作戦を前に、今まで即断即決をしてきたミケちゃんは怖くて逃げ出してしまう。そこに駆けつけたのは副長のしろちゃんだった。(そんなしろちゃんも機関科と機関長の柳原 麻侖(まろんちゃん)のおかげで足を動かせたのだが。)不器用なしろちゃんはそのまま言葉をぶつける『私はあなたのマヨネーズになる』と。『艦長に足りない部分は副長の私、ううん「晴風」のみんなで支えるから。海の仲間に越えられない嵐はないんでしょ!?』補足するとしろちゃんも最初はこんな性格じゃなかったわけで。それこそ艦長に不満を感じていた側だったのに一緒に航海をするなかで家族の大切さに気付けたんだと思う。航海って人生なんだな……

 

七つの青は今日も世界を包んでいた

12話を視聴し終えてゆっくりと深呼吸をする。ラスト数分の結末とEDの入りが反則技なんてものじゃなかった。もし未視聴であればあのシーンを見てほしい。「ハイスクール・フリート」を見てほしい。きっとこの航海はあなたに大切なものを教えてくれるから。真っ暗な夜を行く旅人を北極星が導くように、無くなることのないコンパスが胸に宿るのを信じて。

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