一人暮らしが終わる前日。人生初の同人音声/ASMRを試した話
――三月。
例年であれば、四月の新生活に不安と期待を膨らませながら、新しい環境に向けての準備期間となるはずの時期。
しかし、世間では新型コロナウイルスの影響によって、大型イベントが自粛になったり、学校が一ヵ月前倒しで休校になったり、卒業式や入学式も中止に追い込まれたりするなど、未曽有の事態となっている。
そんな令和二年の三月二十日、深夜三時。
私は生まれて初めて、「同人音声」を購入した。
購入に至った経緯としては、今までお世話になっていたFANZA動画やFANZA電子書籍のマンネリ化。
そして、学生生活を終えて一旦帰省するにあたり、ネックとなる自慰行為の難易度上昇。
これらの要因によって、一人暮らしだからこそ周囲の目を気にせず楽しめる娯楽「同人音声」を最後に試してみる運びとなった。
実は数年前から「催眠音声」には興味があったが、意志の弱い人間が一人で聴いたらもう正気に戻ってこれない代わりに究極自慰を体験できる諸刃の剣、というイメージが強く中々手を出せずにいた。
だが近年は「ASMR」「バイノーラル録音」「同人音声」とジャンルが増えて、以前よりも気楽に、より多くの層が楽しめる娯楽に進化しているようだ。
確かにTwitterでもヒョロワーさん達が、ASMRがないと就寝できない……等、「音声作品」について高評価で魅力的である旨を発言していた。なればと意を決して、私は同人音声・催眠音声・ASMR・バイノーラル録音のメッカであるDLsiteを訪れた。
試しに恐る恐る「催眠音声」と検索をかけてみると、上記1000件以上の作品が瞬時にヒット。コンピューター技術は日々進歩し我々の生活を豊かにしてくれるが、行き過ぎた進化は絶望への近道なのではないかと考えさせられる。それくらい自分一人の頭では到底処理しきれない数のR18作品を前に、何を購入すればいいのか途方に暮れてしまう。
しかし、思えば幼少期に初めてゲーム店を訪れた際も、棚や壁に所狭しと並べられたゲームボーイソフトを前に迷いながらも「ロボットポンコッツ ムーンバージョン」をジャケット買いして、結果的に大成功。
そうだ、ジャケット買いをしよう。
一回そう決めてしまえば、後は野となれ山となれ。
気付いたらするりと、ある作品に一目惚れしていた。
即おち!〜"Sweet"〜脈なし女子を即堕ち催眠→居酒屋バイトJDこのは・おねだり生中♪膣内射精【バイノーラル録音】 [上海飯店] | DLsite 同人 - R18
「 K A W A I I 」
少女の無垢で愛らしい幼さを感じさせるイラスト
絵柄に釣られてやってきた者を試すNTR(NTL)
タイトルで不穏に踊る「即おち!~おねだり生中」
これしかない
しかし、いざ購入したものの、どれを聴けばいいのか全く分からない。
ひとまず色々と初めてなので「01_通常ver」を選択。
両手を胸の上に組んで祈るような姿勢で仰向けになる。
衣服は着用(暖房付けてないからね)
そして普段使いしているイヤホンを装着、再生ボタンを押して目を閉じる。
・即おち!_このは_track01[00:34:12]
強制催眠・囁き
「失礼します~ご注文はお決まりですか?」
居酒屋の喧騒と共に聞こえてくる少女、このはの可愛いらしい声と数回のやりとり。
この段階では唾の生音や声の発生位置が多少立体感強いかな?程度の印象。あと、推し声優に若干声が似てるのとS音が強めで性癖。
その後、物語のキーアイテム「主人公(私です)の指パッチン」が響くと、あっという間に洗脳されるこのは。
「大変お待たせしました。
ご注文の
このはのぉ
ご奉仕
です
フフッ 」
突如。
一人暮らしのはずの七畳一間から女性の声がして、私は上体を飛び起こした。
否、
その正体は私の左耳零距離メートルで囁く少女。
甘い吐息さえ感じられるそれは決して「イヤホンの左右から聞こえる音声」などではなく、確実に”ここ”にいる声であり、頭の中に直接話しかけるこのはその人。
落ち着くために、私は両指が手の甲に食い込むほど強く祈りながら、仰向けに姿勢を戻す。
それは再生ボタンを押してからわずか二分十秒の出来事だった。
キス
キスシーン自体は、何度か美少女ゲームで経験済みのため、余裕を持って臨めるとたかをくくる。しかし、美麗なCGとキスシーンに至るまでに積み上げてきた関係性、音声作品では表現できないそれらを補うように、この催眠音声はどこまでも全力を出していた。
閉じているはずの口内に侵入してくる質量を持った音。こちらの舌を持っていかんとするバキューム音と綱引きを繰り広げ、気が付くと陸に打ち上げられた魚のようにパクパクとまぬけな口呼吸をする生き物と化していた。
そして、時折引き合いに出される彼氏。
「わたし……彼氏と軽いキスしか、したことなくって」
「これが本当のキス。――—―お客様、次は何をすればよろしいですか?」
主導権を完全に握られと思って落ち込む私に勇気をくれた彼氏くんに感謝。
耳舐め
音を聞く器官は耳なので、多分一番にバイノーラル録音の凄さが分かる耳舐めシーン。
前戯の囁き、キスで既に心臓がバクバクして仕方なかったのに、ここからが本番とか冗談抜きで口から心臓が飛び出ちゃう。
そうこうしていると、正面でキスをしていたはずのこのはが、ゆるやかな曲線を描きながら右耳に移動する。
そして、遂に侵略が開始された。(念のため、今日耳かきしてて良かった)
今まで認識してなかった耳の感覚がゆっくりと鋭利に研ぎ澄まされ、舌の上で転がされた飴玉が次第に溶けていくように、じわじわと刺激されて快楽の海に沈んでいく。
(映画『最強のふたり』で全身麻痺の主人公が相棒に「耳が性感帯!?」とネタにされるシーンを思い出したけど、こんなの経験したらあながち笑えんよな……)
また、それは彼女も同じようで。耳舐めの合間に荒い息遣いから、このは自身の欲情っぷりも伝わってくるのが本当に良くできてると思う。
そして視聴者の呼称が「お客様」から「お兄さん」に変わって、行為は次の段階に進んでいく。
愛撫~手〇ン~フェ〇チオ
一転攻勢。
洗脳されたままの少女は、その身に燃える欲望を一心に視聴者へ求めてくる。
「見られちゃいました。まだ、彼氏にも見せたことないおっぱい……、綺麗ですか?」
やはりNTR(NTL)定番の彼氏・彼女と比較するセリフは興奮を焚きつける。
そして一通り愛撫を行ってノリノリになったところで、適度に解かれる洗脳。悦楽に浸っている最中に正気に戻された際の反応、その正常と洗脳、本音と建前の中間をバランスよく、ゲーム寄りになりすぎないように演じるこのは役 小石川うに さんの演技には感心させられる。
また、もし音声作品が体に合わなかったら、手や姿勢を変える必要があるかもしれないと心配したのは杞憂に終わる。体の感覚が薄まるほど音声だけに集中したのは、本当に初めての経験であった。
カウントダウン
数年前から存在だけは知っていた”あの ”カウントダウン。
洗脳状態のこのはと、これまでの三十分間を確かめあうように、名残惜しそうに数字をカウントしていく。
こどもの頃にちゃんと数を数えて肩まで湯船につけなさいと言われた教訓が生きたのか、どうにかフライングすることなく、十~零までのフルコースを最後まで耐えきった。
そう、ゼロまで耐えきってしまった。
だがそれ以上に、自分の知らなかった新しい世界の扉をあけた清々しい気分と満足感。生まれたときから背中にあった翼に初めて気づき、己の力で大空を舞うことのできる喜びと万能感を得ることができた。
きっと音声作品を聴かなかったら知らないままだった楽園へ、この翼で飛び立てる気がする。
今は句点 打たずに読点 打ち続けようぜ 未だ見ぬ桃源郷へ、、、
バイノーラル録音にASMR、もっと早く出会いたかった。
※今回感想を書いたのは三パートに分かれたうちのパート一。言わば導入みたいなものなので 、また音声作品が聴ける環境が整い次第、聴きなおして続きかくかもです。